コペル書評

読んだ本の感想をメモ。ときどき映画も。

織田信長のマネー革命 武田知弘

織田信長のマネー革命: 1 (SB新書)

 

人それぞれ「織田信長」のイメージはもっていると思う。

私の場合は「短期間で勢力を広げた軍事的天才。だけど、かなり冷酷な面もあった。」というもの。

この本を読んで「もしかしたら、過小評価していたかな」と思った。

 

本書は織田信長の経済政策に注目した本。

・日本史上初の(実質的な)通貨システム

・関所の撤廃

領地ではなく港を重視

・秤の大きさを統一

・道路網

楽市楽座による価格破壊

などなど。

その先進性には驚くばかり。

 

ただ、そういった政策の肝は、「やり抜く」ということだった。

 

たとえば、関所の撤廃について。

関所というのは、その地域の地侍・豪族たちが旅人から金をせびる為に勝手にやっていること。

 

流通を疎外するだけなので、戦国大名たちは関所の撤廃が必要であることはわかっていた。

 

ただし、地侍・豪族たちの重要な収入源を奪うことになるので、どれほど多くの敵を作るかわからない。普通の戦国大名はその反発を怖れて関所を撤廃できない。

 

ところが、信長はいかなる反発を蹴散らしてやりきってしまう。

 

仏教勢力との抗争も同じ。

行政と宗教勢力の対立というのは、現代でもイスラム圏で深刻だけど、当時の日本もそうだった。

 

当時の仏教界は、(現代の葬式仏教の坊さんたちとは次元が異なり)、日本の富、軍事力が集中していた一大勢力だった。

 

行政側との対立は避けられないが、他の戦国大名は強大な仏教界を怖れて手が出せない。しかし、信長はとことん戦い抜いてしまう。

 

とにかく、敵を怖れず、やるべきことは絶対にやり抜く。

政策の先見性よりも、そこに感動を覚える。

 

満足度:A

戦国時代というと軍事面ばかり注目されるけど、むしろ面白いのは経済面かも知れない。戦国好きなら絶対におすすめ。