コペル書評

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孫正義の参謀: ソフトバンク社長室長3000日

孫正義の参謀: ソフトバンク社長室長3000日

著者は嶋聡(しま さとし)さんという方で、衆議院議員からソフトバンクの社長室室長になった人。

ソフトバンクの参謀として、ボーダフォン買収、光の道論争、再生エネルギー事業、米スプリント買収に立ち会ってきたそうです。

経営にもっとも近い「中の人」の視点から、ソフトバンクの激動の時代を記しています。

それにしても、つくづく思うのは、ソフトバンクは稀な企業です。巨額買収のスケールにしても、経営のスピードにしても、「普通ではない」ですよ。

2兆円使ってボーダフォンを買収したときには、一般庶民の私でも「おいおい。大丈夫か?」と心配してしまったほどです。

急成長した企業として、どちらもオーナー企業のユニクロに対比されることが多いですが、ユニクロはどこまでも本業による拡大です。ダイエーの急成長を思い起こされるもので、(ダイエーは破綻したので縁起でもないですけど)、いわゆる本業による店舗拡大による成長です。ある意味で、正統派の経営。

ソフトバンクは、「大丈夫か?」というほどの野心的な買収で成長してきたわけです。このスケールとスピードは、孫社長のパーソナリティと切り離せないでしょうし、こんな巨大企業が一人で動かせるわけないので、社風とか経営幹部の手腕も興味深いです。

とにかく、本書を読めば、スケールの違いに圧倒されます。

本を読む前は、光の道構想なんて無線LAN時代に逆行するとか(事実でしょうけど)、再生エネルギーは原発事故の空気に動かされて迷走したとか、いろいろケチをつけたくなってしまうわけです。

しかし、そんなレベルの話ではない。圧倒的なスケールを持つ人々が何を考えて仕事をしてきたか。本を読むだけでも、小さく考えて仕事をしている人の殻を破ってくれるような内容です。