世紀の相場師ジェシー・リバモア | この虚しさは何だろう
- 作者: リチャードスミッテン,Richard Smitten,藤本直
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2001/06
- メディア: 単行本
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彼のことを調べつくした著者が、見事な伝記にした。
相場師はどんな人か
リバモアの人生はジェットコースターのような起伏に富んでいるので、とにかく面白い。無一文から成り上がった成功物語に終わらず、何度も破産に追い込まれる。そのたびに相場で再起して前回以上の金持ちになっている。
晩年は再起できなかったが、破産した過去の教訓から膨大な信託を組んでいたので、金には困らなかった。
それにしても、相場で成り上がる人はリスキーな投資をやっている。感心するというか、呆れるというか。どこか神経が切れているとしか思えない。
もう一生金に困らないほど成功しているのに、いざ勝負時になったら、全力でポジションをもったりする。だから、どれだけ金持ちになってもあっさり破産する。値動きが逆に向かえばそうなる。勝ち始めると再起も早いんだけど(笑。
以前、ネットで見たんだけど、数十万円でFXをはじめて、3億円を作った人がいた。(ネタか本当か判断できないが、一応Youtubeで取引証拠をアップしていたり)。その後、短期間に3億すべての金をすって無一文に逆戻りしていた。
3億円もあるのにリスキーな投資に全財産賭けるのは、どういう神経をしているのか不可解だと思っていた。逆にいえば、そういう人だから3億作れたともいえる。相場師はみんなそうなんだろうな。とてもじゃないが真似できない。
不幸な人だった
リバモアはとんでもない金持ちだから女性関係も派手なんだけど、何度結婚しても幸福を得られず不幸な私生活が続く。
相場師というのは根本的に不幸な人なのではないかと思ってしまう。どうしても満足を得られないタイプというべきか。
本の写真からもわかるように、ドンファンのような女好きの豪傑タイプではない。むしろ繊細に女性に救いを求めている。
妻が子供を銃で撃つ事件を起こしたり、とにかく家庭がめちゃくちゃ。最後の結婚も不幸なままで、自殺することになった。
若くして成功しちゃったので、心を熟成させる時期がもてなかったように思えた。
バケットショップは現在のFX取引
ところで、本書には20世紀初頭のバケットショップの話が出てくる。バケットショップというのは、株式の賭場。
株式取引のようだが、実際に株を売り買いするわけではなく、株価データを使って胴元と投機家とが金のやり取りをする。
当時、本当の株式取引をするなら大きな元手が必要だったが、こういったバケットショップなら庶民の小遣いで株式投資の真似事ができた。
ここまで読んでピンと来た人がいると思うけど、これって現在のFX取引と同じ。実際に通貨を買ったり売ったりするわけではなく、あくまで為替の値動きデータを使って、FX証券会社と投資家が金のやり取りをしているだけ。当然、投資家が勝てば、胴元のFX証券会社が損をする。
この基本をわかっていないでFXやっている主婦がけっこう多いと聞く。FX証券会社は、客に損をさせることで利益を出すわけだから、値動きデータなんて操作し放題。為替レートが客のロスカットのラインに近づいたら、わざと刈り取るくらいのことは平気でやる。実際の為替レートはあくまで参考に過ぎないわけで(笑。
20世紀初頭のバケットショップは、そういったコンピュータ操作ができない。だから大勝ちした客(=胴元を大損させた客)をどうしたかというと、暴力を背景にして支払いを拒んでくる。
バケットショップの投機で大儲けしたリバモアは何度も理不尽な支払い拒否に直面した。そこで、どうしたか。その賭場で大騒ぎした。周囲の客にたいして、「このバケットショップは支払いをしない」と騒ぎ立てた。そんな風評が広まったら商売できないからバケットショップはしぶしぶ支払うことになった。
要するに、こういった私設取引所は、ヤクザな世界なんです。客が負けることが前提で、大勝ちしたら身の危険がある。それを跳ね返すようなド根性があるからリバモアは金を蓄積できた。
ひるがえって、現代のFXは、さすがに支払い拒否はないだろうけど、コンピュータの操作でレートをどうとでも動かせる。客が負けることが前提になっていることに違いはない。生まれつきの相場師ならいいけど、普通の人が近寄る場所じゃない。