ホームレス作家 | ドキュメントの凄み
困窮の中でホームレスになり、足掻いた日々を記録した本。
作家という職業の不安定さ、ホームレス生活の過酷さ、家族関係の難しさ等、読みどころが満載。
やっぱり一次情報が面白い
本書を読むと、ホームレスになって過酷な経験をしていないと、ホームレスの描写なんてできないことがよくわかる。
ホームレス生活のディテールから心理描写に至るまで、読んでいて凄みを感じる。
著者は自分の体験したことを書いていて、しかも、人生を賭けて書いているわけで、これが面白くないわけがない。
やっぱり一次情報が一番面白いんだと痛感する。
底辺に落ちたときに支えになるもの
いったんホームレスのように底辺に落ちると、さまざまな理不尽な目に合う。
そんなときに、著者には友人がいて、話を聞いてもらうことができた。それによって、精神状態が救われる描写が何度もある。
話せる人がいないと、諦め(絶望)によって完全な「浮浪者」となってしまう。そうなると這い上がることができない。
人間関係がないと、いったん落ちたときに心が持たないことがよくわかった。
まともに扱われることの重要性
著者はホームレスになっても服装に気を付けることで、ホームレスが経験するであろう侮蔑をぎりぎり避けることができた。
しかし、妻子を福祉行政に預けたことで、経済力を失った人が経験する屈辱を味わうことになった。
ホームレスにたいして、人々の眼差しはあまりに厳しい。同じ人間として敬意をもって接する人がいない。
人としての尊厳を無視されて、まともに扱われないことが、どれほど人間の心を傷つけ、そして回復不能にしていくか。
ホームレス問題を考えるときには、どこまでも彼ら一人一人を尊重すべき人間として接することが欠かせない。