ある日突然40億円の借金を背負う―それでも人生はなんとかなる。|映画化希望
父親の急死によって事業をつぐことになり、決算書を見たら40億の借金。どん底の中でぎりぎり踏みとどまって、見事復活した男の記録。
ある日突然40億円の借金を背負う――それでも人生はなんとかなる。
- 作者: 湯澤剛
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2015/07/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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過去5年に読んだ数々の書籍の中で、もっとも衝撃を受けたのが本書。
私自身も借金に苦しんだ経験があり、今も状況が良くないので、本書に強く共感した。
絶望状況の心理描写
返せるあてのない借金を背負って、債権者に頭を下げて回り、金策に走り続ける日々。
末期の中小経営者にありがちなことだが、こういうとき人はどういった心理状態なのか。
そのことが非常によくわかる。
一言でいえば、死にたいとは思っていないのに体が勝手に自殺しようとする状態だ。まったく死ぬことなんて考えていないのに、体が勝手に駅のホームから落ちようとする。
本書にも書かれていたが、自殺者した人々の中には、そのようにして命を失った人がけっこういるのではないか。
追い詰められるとはそういうことなのである。意識できる以上に辛い日常を送っていると、無意識が死んで楽になりたいと行動してしまう。
本書は、抱えきれな借金を背負った人の苦しみを実体験から記録している。実に貴重な記録である。
流されていく描写
事業を継ぐことになった経緯もリアルだ。著者はぜったいに父の事業を継ぎたくなかった。継ぐことを怖れてさえいた。
しかし、いざ父親が急死すると、印鑑を押す人が他にいないので流されるように社長の作業をしてしまった。
母に辛い作業を押し付けることもできず、流されるままに事業を継ぐことになってしまう。
現在の著者なら知識や行動力がそなわっているので、当時の状況に置かれたら、困難であっても清算手続きに奔走しただろう。
しかし、何も知らない30代の青年は、その決断に踏み切れないのだ。
これも実にリアルな描写であり、世間には「破産すればいいじゃないか」なんて気軽に言う人間がいるが、現実はそんなに簡単なものではない。
この点でも貴重な記録である。
このまま映画になる
本書には印象の残るシーンばかりだ。
- 従業員が会社の金を横領している。しかし、やめられたら店を開けることができないから、社長である著者がその従業員に謝ってしまう。
- 銀行から返済を強要されたら即破産となるので、銀行との交渉に神経を尖らせ、電話がなるたびに怯える。
- 天気が悪いと店の売上が減り、金策に窮する。テレビが天気予報で雨を伝えると発狂しそうになる。
- あらゆる場所に「きけわだつみのこえ」を置いて、特攻した方々の無念を思うことで、ぎりぎりの精神状態を支える。
これはもう映画化すべきでしょう。本人だから書けるようなリアルな描写なので、さらっと読んだだけでも一生忘れることができないシーンばかり。
挽回の施策が参考になった
こんな絶望的な状況の中で、著者のとった行動がすごい。
- 期限を5年と決めて、状況が変わらなければ清算する。その5年間は借金が増えても気にしない。
- 毎日襲ってくるトラブルから逃れる時間をつくって、そこで長期的な戦略を練る。
- 成功モデルを作るために1店に注力し、他の店舗は放置。
- 成功した1店舗ができたら、店舗数を減らして、縮小しながら展開していく。
上記4つは、経営者だけでなく、あらゆる苦境にある人に大きなヒントになる。
私も現在の苦境を挽回する勇気が出てきた。
苦境にあるとどうしてもトレードオフが認識できなくなる。なんでもいいから手当たりしだいにやりたくなってしまう。しかし、そんなやり方が通用する段階ではない。
決断するしかない。
本書からその覚悟をもらった。
一生手元に置いておきたい本である。