コペル書評

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イミテーションゲーム | 悲劇のアイコン

映画「イミテーション・ゲーム」を観たのでメモ。

アラン・チューリングを描いた作品。

 

 

第二次大戦中にドイツの暗号エニグマの解読に成功して、英国を勝利に導くストーリー。

しかし、映画の中で印象的なのは、アスペルガー症候群であり同性愛者であったチューリングの描写。

チューリングの生きづらさと孤独。

そして、暗号解読は戦後になっても極秘扱いとされたため、業績が評価されることのない不遇の生涯が描かれている。

<以下、ごく一部ネタバレです>

殴られる描写

映画の中で、チューリングが殴られる描写が何度もある。

アスペルガー症候群に特有の傾向として、どうしても人を怒らせることを言ってしまう。

周囲の人と上手くやっていけないので、チューリング自身も深い孤独感を抱えることになった。

 

複合的な悲劇

チューリングの生涯は悲劇が折り重なっている

  1. アスペルガー症候群のため、対人関係の困難と孤独を抱えている。
  2. 今では罪に問われない同性愛ということで、社会的に抹殺された。
  3. 救国の英雄となるべき業績をあげても、いっさい評価されなかった。
  4. チューリングマシンの科学的貢献も、コンピュータの発展をみることなく亡くなった。

映画の中では、同性愛の有罪判決を受けて、ホルモン注射をされる話も出てくる。その注射が心身に悪影響を及ぼして、自殺につながったと暗示されている。

また、学生時代に唯一の理解者だった親友との死別があり、深い喪失感が描かれている。

どれか1つの悲劇だけでも十分に映画の素材になるのだが、複数の悲劇を背負っている。

今後も、チューリングは悲劇の生涯を示すアイコンとしてたびたび引用されるはず。

チューリングを思い出すことで、さまざまなマイノリティへの眼差しが変わってくる気がした。