コペル書評

読んだ本の感想をメモ。ときどき映画も。

エッセンシャル思考 | 本質目標を追いましょう

 

エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする

エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする

 

 仕事を断れない人が読む本

著者がこの本を書くきっかけになったのは、妻が出産したときに、つまらない会議を断れなかった苦い経験だという。

そのことを心の底から後悔していることが本書を通して伝わってくる。大切なものを選択しないと人生が大変なことになると。

本書の内容は実に平凡なものだけど、いろいろ考えさせられることがあった。

 大量行動と一点突破のどちらが正しいのか

エッセンシャル思考というのは、「重要なものを選択」すること。だとしたら、よく言われる「大量行動の法則」に反対しているのだろうか。

ビジネスを成功させる上で、大量の行動が大切だとされる。事前に結果を予測できるわけがないので、試行回数を増やすことが大切だと。

大量行動のバイブルといえば、以下の2冊。

 

大金持ちをランチに誘え! 世界的グルが教える「大量行動の原則」

大金持ちをランチに誘え! 世界的グルが教える「大量行動の原則」

 

 

手取り1655円が1850万円になった営業マンが明かす月収1万倍仕事術

手取り1655円が1850万円になった営業マンが明かす月収1万倍仕事術

 

 

上記2冊を読むと、大量の行動こそ成功のカギだと痛感する。ほとんど異論の余地がないほど。私自身の仕事上の戦略でもあります。

 

大量行動の法則とは何か。

ある目標があって、そこに至る方法が20個あるとする。そのとき「すべてやるのが一番だ」というもの。

どの方法がベストか悩んでいる時間は無駄。どれだけ考えても事前にわかるわけがない。すべてやってみて、結果で判断するしかないのだ。

 

じゃあ、エッセンシャル思考は何か。少数の本質的なことだけを選んで実行するもの。

 

となると、大量行動とは逆のように見えるが、実際はそうではない。エッセンシャル思考における「選択」というのは、

「大切な家族の絆」VS「くだらない雑用」

であるとか、

「テーマの定まった仕事」VS「多ジャンルのまたがる節操のない仕事」

といったことなのだ。

要するに、目標から外れる雑用なんて断ろう、というだけのことである。

だから、「大量行動するためには、エッセンシャル思考が必要」といった整合性を取ることができる。

 

「本質目標」という概念が「ミッション・ビジョン」に取って代わる

本書「エッセンシャル思考」の中で印象に残ったのは、本質目標(エッセンシャル・ゴール)という概念。

以下の図を見て欲しい。

 

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簡単に説明すると以下。

  • ビジョン・ミッション :(例) 世界を変える。
  • 価値観 :(例) チームワーク。
  • 本質目標 :(例) すべての国民にインターネット接続を。
  • 四半期目標 :(例) 20%の売上アップ

ビジョン・ミッションおよび価値観なんて、抽象的な内容だから、「誰でも同じことを言う」と本書は断じている。

そんな抽象的なものが大切なのではなく、具体的で刺激的なものが「本質目標」だ。達成したかどうかが明確にわかるものであり、同時にわくわくするような目標だ。

この本質目標をしっかり見据えていれば、その目標にふさわしくない雑用は断れるはず。

この部分は、私がうすうす感じていたことだった。

ビジョン?ミッション?価値観?

誰でも同じようなことを言うし、ただの(抽象的な)綺麗ごとじゃん。そんなに重要なことなのか?と心の底で思っていたので、本書を読んで、胸がすくような思いだった。

 

大切なのは、具体的で刺激的な目標なのだ。本書で引用されていたブラッドピットの事例が素晴らしい。

ハリケーン・カトリーナニューオリンズが水浸しになったときに、ブラビの主催するNPOは「水害地域に190戸の家を提供する」という目標を立てた。

これ。これが本質目標。

ミッションとか価値観で表現される言葉遊びではない。エッセンシャル・ゴールとは、このように具体的で野心的なのだ。

こういった目標が立てられる人なら、重要なものを選べる(エッセンシャル思考ができる)のも、納得である。