リーン・スタートアップ | 本書を読まずに起業してはいけない
- 作者: エリック・リース,伊藤穣一(MITメディアラボ所長),井口耕二
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2012/04/12
- メディア: 単行本
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起業の世界ではとても有名な本。
もうIT系のスタートアップでは常識になっている内容です。
5行で内容をまとめる
- 顧客に価値を提供できないプロダクトは、すべて無駄。
- 価値を提供できたかどうかを検証できないプロダクト、および学習できないプロダクトはすべて無駄。
- 軸足を固定しながら方向を変えて(ピポットしながら)、リリースしたプロダクトを検証し続ける。戦略が固まるまで大勝負はしない。
- 作業は価値提供の向上とアイディアの検証に絞る。
- これらの改善検証をMVP(最小限の価値提供にしぼった商品)を使って超高速で行う。
検証の鬼になれ
何らかのプロダクトやサービスをリリースしたときに、最初の思惑通りに行くことが少ない。
誰が顧客なのか、顧客はどこに価値を感じるのか、顧客はどのように使用するか。
こういった基本的ならことすら、最初の想定は外れ続ける。だからこそ、スタートアップは成功率が低い。
そこで、最小限のプロダクトをリリースしながら、顧客の反応を検証して、高速で改善しつづける。
ピポットという概念が重要
本書の中で一番重要だと思ったのは、ピポットという概念。
ピポットというのは、バスケのときによくやる動作で、軸足を固定しながら、もう片方の足で方向を変えること。
起業して何らかのプロダクトをリリースする。しかし、上手くいかない。そこで、ちょっとだけ変えながら、顧客の反応を検証する。
これが難しい。
要するに、起業家というのは二通りある。第一のタイプは「絶対に俺の考えは正しいはずだ」と信じ切って、どこまでも同じ戦略で推し進める。そして時間と資金が尽きてゲームオーバー。
第二のタイプは、プロダクトをリリースしたけど売れなくて、すぐに諦める。そして、まったく違うサービスを模索する。また売れない。違うことをやる。また売れない。違うことをやる。売れない。そのうちゲームオーバー。
この二つのタイプでは駄目ですよ、という話です。
最初の想定どおりに上手くいくわけがないので、初期のアイディアに固執しては駄目。だからといって、すぐに諦めて別のことをするのも駄目。
売れるか売れないかは紙一重なんだから、少しずつ戦略の方向を変えながら、検証を続けることが大切なんですな。
MVPというスピード感
プロダクトなりサービスを最初から作りこむ必要はない。なぜなら、どうせ売れないから。
その商品のもっともコアの部分(MVP=最小限の価値提供にしぼった商品)だけを作る。これなら開発のコストを抑えることができる。
そのMVPを顧客に提供して、反応を検証しながら、改善を続けていくということです。
プロトタイプとか、ベータ版というのと同じようなことだけど、ちょっと違う。プロトタイプというのは、完成品の「雛形」ということなので、顧客に全体像をイメージしてもらうためのもの。
MVPは戦略の正しさを検証するためのものであり、もっとも重要なアイディアの部分だけを作る。その部分に顧客が価値を感じるかどうかを検証する。
最小限のコスト、最短の時間で、そっこうでMVPを作って、学習しなさい。そういうことです。
実は楽天もこのやり方をとっていた。
この本の中で、プロジェクト会議の風景が描写されている。
担当社員が3ヶ月のプロジェクト計画を提出する。すると三木谷社長は「この部分はいらない。この部分は後回し。そうすれば1週間でできる」みたいな感じで、コアの部分だけを即効でリリースさせる記述がある。
まさにリーンなプロジェクトスタートであって、成功するIT起業家はみんなこのスタンスなのでしょう。
(ちなみに、「成功のコンセプト」は、「リーンスタートップ」よりずっと以前に刊行された本です)
ネット業界の定跡
リーンスタートアップの考え方は、とりわけネット業界で重要なものとなる。本書「リーン・スタートアップ」の著者は、メッセンジャーアプリ起業を通して、リーンスタートアップに行き着いている。
ネット業界というのは、パソコン1台あれば起業できる世界なので、イニシャルコストが低い。失敗しても失うものがない。しかし、とにかく、変化が早くて、時間だけが重要なコストになる。
だから、失敗を前提としたスピード重視の手法が欠かせません。
だけど、もしかしたら、多くの業種でも有効なのかも知れない。最初のアイディアに固執せず、顧客との対話を通して、売れるビジネスを模索する。起業とは全部、そういうものなのでしょう。
そういえば、ドラッカーも「重要なのは売上ではなく、学習だった」という名言を残しています。
「リーンスタートアップ」は、起業する人、プロジェクトを開発する人にとって必読書です。