コペル書評

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本当は怖い昭和30年代 ~ALWAYS地獄の三丁目~ 鉄人社

本当は怖い昭和30年代 〜ALWAYS地獄の三丁目〜

 

何年か前に、「ALWAYS三丁目の夕日」という映画があって、昭和30年代をノスタルジックに描いていました。ちょっとした30年代ブームでしたね。

 

実際の30年代はこんな時代だった、というのが本書。

タイトルでわかるように、現実の30年代がどれほど酷い時代だったか解説しています。

本書は各種データも使っていて説得力がありますが、文章はスポーツ新聞のように遊び心がありました。読んでいて楽しかった。

 

とにかく、昭和30年代というのは、今から見れば信じられないほど不潔で、安全性は低く、人々は粗暴で、不正がまかり通っていた。

 

そういう内容だと予想したうえで読んだのですが、想像を超えていました。

 

たとえば、幼児死亡率。これは途上国と先進国で大きく変わる数値なので、国の比較によく使われます。

 

昭和30年代の日本の幼児死亡率は、なんと現代の最貧国であるカンボジアより高かったという。ほんの数十年前ですぜ。ほんとうですか。

 

そのほかにも、人々の粗暴さに驚かされます。犯罪にしても、社会風潮にしても。モラルは低く、危険で、不潔な時代だったわけですね。

 

本書を読んでみると、現代の中国を見る目がガラッと変わります。社会に蔓延する不正、不潔さ、粗暴さ、犯罪、環境汚染。今の日本から見て信じられないことの数々ですが、実は日本だって数十年前は同じだった。

 

たとえば、粉ミルク汚染。安全よりも営利を優先した企業によって、幼児が多数死んで、だけど企業は責任を取らず。まったく同じことが日本でも起きていました。

 

つくづく思うのは、今の日本は、先人たちの知と汗によって、こんな良い国を作り上げたのだということ。

「昔は良かった」式の懐古主義にだまされてはいけない。あらゆる意味で、現代の方がましなのだ。昭和30年代なんて、どう転んでも戻りたくない時代です。

 

本書を読むと、懐古主義に怒りを感じるようになる。
日本社会は過去50年でどれほど偉大なことを達成したのか。それを忘れるなんて許されないことですね。
 
満足度:B
面白かったけど、一度読めば充分。